活版印刷はどこまで凹ませる?|印圧と美しい仕上がりの関係

活版印刷と聞くと、紙に残る「凹み」を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。

指で触れたときに感じる、わずかな段差。

光の当たり方によって見えてくる陰影。

せっかく活版印刷でつくるのであれば、私たちも、その手触りを楽しんでもらえるくらいの凹みは残したいと考えています。

では、深く凹ませれば凹ませるほど良いのでしょうか。

実際に印刷していると、そう単純ではありません。

私たちが大切にしているのは「どこまで深く凹ませられるか」ではなく、どこが一番美しく見えるかです。

 

「もう少し凹ませた方がいい」と思うことがあります

試し刷りをして、仕上がりを見る。

インクはきれいに乗っている。

文字もきちんと出ている。

印刷としては問題ない。

それでも「少し物足りないな。」と感じることがあります。

 

活版印刷を選んでくださったお客様なら、紙を手に取ったときに、活版印刷ならではの手触りも楽しみにされているだろう。

そう考えると、もう少し凹みを感じられる仕上がりにしたくなります。

実際に、お客様と相談したうえで印圧を強めたこともあります。

数字だけを見て決めているわけではありません。

最後は実際の仕上がりを見ながら、「ここが一番きれいだ」と思えるところを探していきます。

 

でも、強く押せばいいわけでもありません

印圧を強くすれば、当然凹みは大きくなります。

ただ、そこには限界があります。

圧力をかけすぎることで文字や線の輪郭がにじんだように見えてしまったり、紙に無理な力がかかって表面を傷めたりすることがあります。

前回のコラムでも触れましたが、厚い紙であっても、紙の性質によっては強い圧力をかけることで表面が裂けてしまうこともあります。

凹みを深くすることだけを追いかけてしまうと、本来きれいだったはずのデザインを崩してしまう。

それでは、活版印刷の良さを生かしたことにはならないと思っています。

 

両面印刷では、さらに悩みます

特に気を使うのが、両面に活版印刷をする場合です。

片面だけを見れば、「もう少し凹ませたい。」と思うことがあります。

でも、その圧力は当然、紙の裏側にも影響します。

片面を深く凹ませることで、反対側の印刷に影響が出てしまっては意味がありません。

・表面の美しさ

・裏面への影響

・紙の厚さや柔らかさ

・デザイン

それらを見ながら、どこまで印圧をかけるかを決めていきます。

だから「両面とも、とにかく深く凹ませてください」と言われても、単純に印圧を上げればいいというものではありません。

 

印圧に「この数値なら正解」はありません

活版印刷では、紙が変われば仕上がりも変わります。

同じ紙でも、デザインが変われば適した印圧は変わります。

細い文字なのか。

大きな文字なのか。

線なのか、広い面なのか。

片面なのか、両面なのか。

その都度、実際に刷ったものを見ながら調整します。

私たちが印圧を決めるときに一番大切にしているのは、見た目の美しさです。

深さを競うのではなく、そのデザインが一番きれいに見えるところまで。

そして手に取ったときには、活版印刷らしい手触りをきちんと感じてもらえるように。

その間にある、ちょうどいいところを探しています。

 

凹みは、見るだけではなく「触る」ための表現でもあります

活版印刷のおもしろさは、写真だけではなかなか伝わりません。

実物を手に取って、指で触れてみる。

そこで初めて、「あ、凹んでいる。」と気付く。

私たちは、その瞬間も活版印刷の魅力の一つだと思っています。

だから、凹みをなくしたいわけではありません。

むしろ、せっかく活版印刷を選んでいただくのであれば少しでもその手触りを楽しんでほしい。

ただし、深く凹ませることそのものを目的にはしない。

きれいに印刷されていて、そのうえで触っても楽しめる。

そのバランスを大切にしています。

 

一枚ずつ、ちょうどいいところを探しています

印圧を弱くすれば、紙への負担は少なくなります。

強くすれば、活版印刷らしい凹みは感じやすくなります。

どちらか一方が正解ではありません。

実際の仕上がりを見ながら、

「もう少し。」

「いや、ここまで。」

と調整していく。

その積み重ねが、活版印刷の仕上がりをつくっています。

中村印刷株式会社(うみよこ活版のネコ)では、名刺やショップカードをはじめ、さまざまな活版印刷を制作しています。

「しっかり凹ませたい」
「両面印刷だけど、裏側への影響は抑えたい」
「このデザインなら、どのくらいの凹みがきれい?」

そんなご希望も含めて、お気軽にご相談ください。

紙やデザイン、そして実際の仕上がりを見ながら、活版印刷ならではの手触りと見た目の美しさ、その両方を大切にした一枚をご提案いたします。

 

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