活版印刷機はいつまで使えるんだろう。

会社にある活版印刷機を見ていて、ふと思いました。

この機械、いつまで使えるんだろう。

考えてみると、少し変な話です。

会社で使っているパソコンを「あと30年使おう」とは、まず考えません。

印刷会社にある新しい印刷機だって、いつか部品の供給が終わったり、メーカーの保守が終了したりして、入れ替える時期がやってきます。

ところが活版印刷機は、何十年も前につくられたものが、2026年の今も普通に仕事をしています。

動力電源を入れて、ローラーが動いて、版にインキがついて、紙に印刷する。

今日も普通に動いている。

よく考えると、なかなか不思議な機械です。

 

もしかすると、60年くらい働いている

私たちが使っているハイデルベルグの活版印刷機も、正確な製造年はまだ確認できていませんが、1960年代ごろのものではないかと考えています。

仮に1960年代だとすると、もう60年ほど前の機械です。

1964年には東海道新幹線が開業し、東京オリンピックが開催されました。

日本中で新しいものが次々と生まれていた、そんな時代につくられた機械が、2026年の今も印刷会社の中で動いている。

しかも面白いことに、1960年代は印刷の世界でも大きな変化が進んでいた時代です。

活版印刷が長く印刷の中心を担ってきた一方で、オフセット印刷など新しい印刷方式が広がっていきました。

つまりこの機械は、印刷の主役が少しずつ変わっていく時代を生きてきた機械でもあります。

そして60年ほど経った今

活字で文字を組むこともありますが、基本的にはパソコンでつくったデータから版をつくり、その版を何十年も前の機械に取り付けて印刷しています。

データは2026年。印刷機は1960年代。考えてみると、ずいぶん不思議な組み合わせです。

 

「古い機械」なのに、現役です

 

古いものを置いているだけなら、それほど珍しくないのかもしれません。

昔のカメラや時計、車など、古いものを大切に残している人はたくさんいます。

でも、会社にある活版印刷機は展示品ではありません。

実際にインキをつけて、紙を入れて、お客様の印刷物を刷ります。

つまり、古い機械を保管しているのではなく、今も普通に仕事をさせています。

ここが活版印刷機の面白いところです。

もちろん、古いから壊れないわけではありません。

調整が必要になることもありますし、ローラーなど、状態を見ながら手を入れなければならない部分もあります。

今の機械なら、調子が悪ければエラー番号が表示されて、「○○を確認してください」と教えてくれるものもあります。

活版印刷機は、そんなに親切ではありません。

いつもと音が違う。

インキのつき方が少し違う。

紙への当たり方がおかしい。

そんな変化を見ながら、人間のほうが「今日はどうした?」と考えます。

機械というより、少し道具に近いのかもしれません。

 

最新の印刷機と競争したら、たぶん負けます

印刷会社として考えれば、新しい印刷機のほうが便利です。

速い。

安定している。

大量に刷れる。

細かな調整も多少は自動化されています。

活版印刷機で一枚ずつ刷っている横で、別の印刷機ならどんどん仕事が進んでいきます。

「どちらが効率的ですか?」 と聞かれれば、答えは簡単です。

たぶん、活版印刷ではありません。

それなのに、今も使っています。

 

便利な機械がある中 わざわざ戻ってきた

活版印刷は、かつて印刷の中心だった方法です。

その後、もっと速く、もっと大量に、もっと安定して印刷できる方法が生まれ、印刷の主役ではなくなりました。

これは当然のことだと思います。

仕事として考えれば、便利な方法に変わっていくのは自然です。

ところが面白いことに、便利な印刷方法がたくさんある今になって、もう一度、活版印刷を選ぶ人がいます。

名刺。 ショップカード。 ポストカード。 パッケージ。

大量に速く刷るためではなく、わざわざ活版印刷を選ぶ。

昔と同じ機械なのに、求められている理由は昔とは少し違うのかもしれません。

 

同じデータでも、同じものにならない

インキがついた版を押し当てて、紙にインキをのせる。

仕組みだけを見ると、とても単純です。

でも、実際に刷ってみると意外と単純ではありません。

紙を変える。インキを変える。 印圧を変える。

ほんの少し条件が変わるだけで、仕上がりの表情も変わります。

柔らかい紙なら、版の跡が少し感じられる。

紙によっては、それほど凹ませないほうがきれいに見える。

細い文字と大きなベタでは、同じようにはいきません。

「データを送れば、いつでも全く同じものが出てくる」

という感覚とは、少し違います。

面倒といえば面倒です。

でも、その面倒な部分に、人が調整する余地が残っています。

それが、活版印刷を続けている理由のひとつなのかもしれません。

 

100年使える機械なのか?

では、この活版印刷機は100年使えるのでしょうか。

正直、分かりません。

機械そのものが動いていても、ローラーなど交換が必要なものがあります。

部品の問題もあります。

使う人も必要です。

そして何より、この機械で刷りたいものがなくなれば、動かす理由もなくなります。

だから「昔の機械を残すこと」そのものだけを目的にしたいとは思っていません。

古いものだから価値がある。

希少だから価値がある。

それだけでは、仕事として使い続ける理由にはならないと思います。

ただ、もしこのまま使い続けることができれば。

この機械が100歳になる日が来るのかもしれません。

そう考えると、100歳になった時をちょっと見てみたいです。

 

それでも、今日も動いています

10年後も使っているのか。20年後も使っているのか。

もしかすると、その先まで動いているのか。

それは分かりません。

でも考えてみれば、何十年も前につくられた機械を前にして、

「あと何年使えるんだろう」 と考えていること自体、ちょっと面白い。

パソコンなら、とっくに何世代も変わっています。

スマートフォンなんて、そもそも存在すらしていなかった時代から

この機械は紙にインキをのせてきました。

そして2026年の今も、やっていることはほとんど同じです。

版にインキをつける。紙を置く。圧をかける。一枚刷る。古いから使っているわけではありません。

珍しい機械を見せたいからでもありません。

今も、この機械で刷りたいものがあるから使っています。

そして、この機械で刷りたい人(お客様)がいるから使えています。

この先いつまで使えるのか。

そんなことを時々考えながら、今日も活版印刷機を動かしています。

 

 

  • お問い合わせ

  • -->

    Contactお問い合わせ

    ご質問やご依頼など
    お気軽にお問い合わせください。

    本社(光市)

    TEL 0833-71-0020

    営業時間 8:00~17:00

    下松支店

    TEL 0833-43-7711

    営業時間 8:00~17:00

    大島営業所

    TEL 0820-72-4151

    営業時間 8:00~17:00

    柳井営業所

    TEL 0833-71-0020

    営業時間 8:00~17:00

    お問い合わせフォーム